花のお墓
「お父さん、そんなんしたら、花がカワイそうやんか。最後までちゃんと見てあげないと」
ある時、私が花を入れ替えるのに古い花を捨てるところを見られて、娘にこう指摘されたのです。
これには参りました。
私は毎朝、まだま村のトイレの花の世話をするのが楽しみで、又ひそかに自慢する気持ちもありました。しかし、いくら美しい花を活けたとしても、後始末が良くなければ花の心を完全にいただいたことにはなりません。日頃人一倍感謝の気持ちは強いと思っていましたが、捨てる花への思いについては娘に1本取られてしまいました。いつもは娘から批判されることがあると、何かと理由をつけて反論するのですが、これだけは全く完敗です。
その日から私は古い花を葬る場所を決め、必ず「お花さん、ありがとう」と気持ちをこめてお別れすることにしました。不思議なもので、それをするとお花のお葬式を済ましたようで、気分がスッキリします。又感謝を込めて花とお別れするようになってから、活ける花への愛情も一層深まり、花も又それに応えてくれるようです。
娘の自慢になるようですが、とにかく彼女は「いのち」に対して敏感で、小さな虫や害になる虫でも、殺生を大変嫌がります。山のことですからアブが飛んでくることもあり、私の場合はそれが体に止まった時には、たたいて殺してしまいます。しかし娘は必ず「お父さん、殺したらアカ〜ン!」と叫びます。「そやかて、刺されたらたまらんやないか!」とその叫びを黙殺し続けております。現に私は何度も刺され、アブに集中攻撃をされたときに十匹くらい殺してしまうと、なんとアブの王者がやってきて、私のくちびるをガブリ。私のくちびるはイカリヤ長介さんもびっくりのタラコ唇になってしまったのです。
その顔を見て、娘は笑いながら「お父さん、それは日頃アブを殺し続けてるから、アブの逆襲やで。だって、私なんてアブが近くにやってきても、刺されたことないよ。虫もちゃんとわかってるんよ」と。
腹が立ちながらも、ついそうかな、と思ってしまいますが、今だにアブが向かってくると殺してしまいます。アブ以上に大変なのがムカデです。これは妻が寝てる時に頭のてっぺんを刺されたことがあるので、出てくる度に大騒ぎになります。ムカデに罪はありませんが、悪者の感じですから、つい情容赦なく袋の中に生け捕りしてそのまま捨ててしまいます。
もちろんこれも娘が見ていると、できません。娘は必ず紙か何かにのせて家の外に逃がしてやるのです。「また入ってくるやないか!」と私が叱ると、娘は「ある人が言ってたけど、ムカデは神さまからの使いなんやって。ムカデさんもこちらが攻撃しなければ、刺したりしないんだから」と完全にムカデの味方です。いのちは一つ、ということでは、娘が正しいのかも知れません。
筆塚や針塚がある位ですから、きっと花塚もあるのだと思います。茶道、華道も少し習った経験があるのに花の後始末について教わった覚えがありません。考えてみると、利用できる時は感謝しても、利用できなくなると感謝もしないでお払い箱というケースが花だけでなく、他にも色々ありそうですね。(村長)

